開院当初より日帰り手術目的で来院された患者様に対してはお待たせすることになっておりましたが、ゴールデンウィーク明けより本格的に手術を始動させていただいております。アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療等はゴールデンウィーク前より行なっておりましたが、やはり本格的な手術となると手術器具の準備や安全性の管理を慎重に行う必要がありますので時間をとって調整して参りました。
耳鼻科の日帰り手術というのは、今に始まったものではなく明治・大正の時代から耳鼻科開業医でも行われてきた経緯があります。そもそも抗生剤が世に出回る前ですので中耳炎や副鼻腔炎からの髄膜炎・脳炎で命を落とすことも稀でなく、ゆえに感染巣除去や膿を出すため手術が必要であったわけです。当時は現代のような内視鏡や顕微鏡も無く、LEDライトもレントゲンもない状況下で淡い光に裸眼で狭い領域の手術を行っていたわけで、まさしく神業的な手術が行われてきたことになります。一部の匠な術者を除いては中々その神業を体得するのは難しかったようで、手術に伴う後遺症も多く出たことは先人らの報告に記されております。
時代は、明治・大正から昭和・平成を経て令和へと移りました。テクノロジーの発展は医療技術の進歩そのもので、その恩恵を耳鼻科手術領域も受けており、手術による体のダメージをできるだけ減らす「低侵襲化」が進んでおります。耳鼻科領域は骨に囲まれかつバリエーションのある複雑な構造をとっている為、この領域の手術は目的箇所(病変箇所)に安全に到達し、安全に病変除去を行い、安全に帰ってくる(元どおりに戻す)という一連の流れが大切です。手術を安全に行うにあたり手術手技は大事なことですが、それだけでは安全な手術は行えず、いかにアプローチを安全かつ効率的に行えるかが要であり、その為には地図(画像)を読み切ることや裸眼では見えない部分を正確に見せてくれる光(機器)が必要となります。当院では「地図」として胸のレントゲン写真並みの低被曝ながら、耳や鼻の複雑な細部の骨構造を再現しうるCTシステムを導入し、また「光」として有能な顕微鏡・硬性内視鏡システムを用いております。それらのアシストにより、術者の技術を十分発揮しうる、精度の高い日帰り手術ができる体制をとっております。
医療先進国である欧米では国や患者の医療費負担軽減の面からも耳鼻科領域でも日帰り手術は10年以上前から行われてきており、近年はその安全性を評価する報告も多く見受けることができます。「低侵襲化」が実現したからこそ、病院でしかできなかった医療技術をもっと身近にクリニックレベルで、ご希望の方は一度受診の上でご相談ください。