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2025.01.27

鼻すすりません かむまでは

インフルエンザ感染が過去にないくらいの勢いで猛威を振るっています。インフルエンザは、ヘルペスなどのいわゆる風邪ウィルスに比べると発熱などの症状が強く出るため、一般の風邪ウィルスとは一線を画した厄介なウィルスとして取り扱われます。特にインフルエンザ脳症は小児の重篤な合併症としてよくクローズアップされますが、小児におけるウィルス性脳症の原因はヘルペスもインフルエンザと同等の割合であり、インフルエンザのみならずただの風邪も軽んじること勿れということになります。基本的にインフルエンザを含めたウィルス感染は自己の免疫で治します。ワクチン接種も自己の免疫を強化する手段の一つですが、インフルエンザにはウィルスの増殖を抑えるタミフル®︎やリレンザ®︎などの抗ウィルス薬があり、発症48時間以内の投薬で発熱期間を約24時間短縮する効果があるとされています。しんどい期間が1日短縮されるのは非常にありがたいことですが、抗ウィルス薬なしで治した場合は強い免疫を獲得できるため、抗ウィルス薬を用いないことはデメリットばかりではありません。

ウィルス感染で問題となるのはその合併症であり、罹患期間が長いと拗れてしまう可能性が高くなるので注意しなければなりません。前述のウィルス性脳症は重篤な合併症の一つですが頻度は高くなく(小児で約1万人に1人:0.01%)、頻度が高い、いわゆる拗れやすい病態は細菌感染の合併で、中耳炎・副鼻腔炎などの上気道病変、次いで肺炎などの下気道病変が挙げられます。特に小児では中耳炎や副鼻腔炎に発展しやすく、近年の大規模再調査の一報でもその合併率は中耳炎で37%、副鼻腔炎で8%とされており、いかに多くの子どもが風邪をひくと中耳炎や副鼻腔炎になるかということが伺えます。

中耳炎や副鼻腔炎が子供に多い原因は構造の問題であり、ウィルス感染による炎症で粘膜の自浄作用が低下し細菌が増殖するのですが、小児は構造が未熟ゆえ鼻と中耳や副鼻腔の行き来がしやすいので容易に鼻の細菌が広がりやすいということです。構造以外にも、もう一つ中耳や副鼻腔の陰圧というのもその広がりやすさに深く関係しています。ゆえに小児に比べ構造が広い大人でも、風邪ひき中に中耳や副鼻腔を陰圧にすると拗れてしまいます。そして、その陰圧を作りだす最たる要因は鼻すすりの繰り返しと言われています。

「風邪を引いた時は鼻をすすった方がいい」という意見も確かに見聞きしたことはあります。その理由として、鼻かみの圧で鼻の細菌が中耳や副鼻腔に到達する点、鼻をすすって飲み込むことで細菌が胃酸で処理できる点などが挙げられています。ただ、事実として耳管開放症(耳と鼻を繋ぐ管である耳管が開き、耳の中と鼻の中の圧が行き来自由)の方は鼻をすすった時に鼓膜が凹み、鼻をかんだ時に鼓膜が膨らみます。これの意味するところは、副鼻腔などの鼻に通じる空洞は鼻すすりで陰圧となり鼻かみで陽圧になるということです。加えて、持続的な鼻すすりが中耳の長期の陰圧をもたらし鼓膜の凹みや癒着の原因になることもわかっています。これらから、風邪引き時の持続的な鼻すすりで中耳や副鼻腔は陰圧となり、鼻の細菌が中耳や副鼻腔に引っ張り込まれることで中耳炎や副鼻腔炎が起こりやすくなると思われます。確かに、鼻かみの圧で鼻の細菌が一時的に中耳や副鼻腔に到達することはあると思いますが、鼻かみ後は副鼻腔や中耳は陽圧に傾きますので、よほど強くそして連続的にかまない限りその後細菌は鼻の中に押し戻されると思われます。

鼻はゆっくり片方ずつ、適切(強すぎず弱すぎず)にかむ。鼻はすすり続けず、すすりすぎた後は鼻かみを忘れずに。風邪をひいた時は実践してみてください。

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