Blog

2024.09.28

めまい・耳鳴りは台風のせい?

暑い夏が終わりを告げようとしておりますが、ここ数年は最高気温を更新したりゲリラ豪雨が多発したりと日本の亜熱帯化を心配するような気候です。亜熱帯化が進んだ場合は台風の増加が予測されるとのことで、台風を代表とする低気圧の接近などで体調を崩すいわゆる「気象病」をお持ちの方には悩みの種となります。

「気象病」の主たる症状は頭痛、めまい、倦怠(けんたい)感、関節痛、気分の落ち込みなどで、いわゆる自律神経の乱れがその病態の根幹です。一説には内耳内に気圧を感知するセンサーなるものが存在し、そのセンサーが気圧の変化を感知して、内耳内の圧変化によりめまい平衡を司る前庭神経が過剰興奮して自律神経の乱れに繋がるのではないかとも言われております。

耳鼻科領域でいうメニエール病や低音障害型難聴といった内耳の水腫(リンパ液が増えすぎて貯まる状態)に関しても気圧変化と症状悪化の関係性は半世紀以上前から報告されており、上述のような「気象病」と重複する病態があるのではないかと考えております。メニエールを含む内耳に関するめまい・耳鳴りと気象に関わる報告は多く、その症状悪化のメカニズムは大きく二つ、直接的か間接的かということで古くから議論があります。

直接的というのは気圧(外耳道圧)そのものが、中耳を介して内耳に圧変化を及ぼすというものです。ただ、気圧の変化から症状出現までは一般的にタイムラグ(9−22時間)があり、台風が近づいてきた翌日に起こるめまい・耳鳴りが多い点、また飛行機のような急激な圧変化で起こるめまいは珍しい点は報告されていますので、このような点を加味すると直接的な圧変化だけで病状が悪化するというのは、そのメカニズムの説明が難しい面もあります。

一方、間接的な内耳への圧変化のメカニズムについては、気圧変化に伴う体のホルモン分泌が介在して、その結果として内耳内の水腫が起こってしまうというものです。一例では、ストレスホルモンの一つで体内に水分を貯めようとするホルモン(抗利尿ホルモン:ADH)が内耳の水腫を引き起こすことが分かっており、もともとメニエール病の悪化にストレスは言われておりましたので、それを裏付けるメカニズムの一つとなりえます。その他、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)という運動や頻脈などの心房に負担を与えることで血液中に増えるホルモンも内耳が水腫になる方向に働く可能性があるという知見も出てきており、運動や自律神経の調節障害等で循環動態に影響を及ぼした時にめまい・耳鳴りが生じうるメカニズムに関係している可能性もあります。ただ、ANPに関してはADHに拮抗(反対に作用)する動きもあるようで、ADHによる内耳の水腫を軽減する作用も報告されるなど、内耳に良い影響があるのかそれとも逆なのか、まだ不明な点が多いのが現状です。ただ、何かしら内耳のリンパ圧調節に関わっているようですので、いい影響があれば内耳の水腫改善薬の開発に繋がりますので、今後の研究成果が待たれるところです。いずれにせよ、内耳の圧変化にこれらのホルモン分泌が関わっているという説の場合、ホルモン分泌から内耳の水腫までには一定時間要しますので、症状出現までにタイムラグが生じうることも理にかなっており病態の理解としてはしっくりきます。

病態を知ることはもちろん予防に繋がります。抗利尿ホルモンは水分が体内に十分あれば分泌は抑えられますし、ストレス消化や自律神経のバランスを整えるためには睡眠や運動が効果的であることは古くから言われております。十分な水分摂取、適度に疲れてしっかり睡眠、健康維持において当たり前のことですが、台風などによるめまい・耳なりでお悩みの方は一度生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

ご予約専用番号050-5433-1208 WEBでの順番予約  お問い合わせ専用番号 072-990-3387 日帰り手術相談受付
一番上に戻る
ご予約専用番号050-5433-1208 お問い合わせ専用番号072-990-3387 日帰り手術相談受付
一番上に戻る